新生ラットの大脳運動感覚皮質(P1)と脊髄(P2)を無血清培地にて共培養し、皮質脊髄路シナプスをin vitroで再構築することに初めて成功した.シナプスの存在は皮質深層を電気刺激することにより、脊髄から細胞外記録、細胞内記録の両方でシナプス電位(細胞内記録ではEPSP)が証明された.細胞外記録でフィールドEPSPが再現性よく記録できることは、シナプス形成を簡便かつ定量的に評価できる系が確立されたことを意味し、この系が皮質脊髄シナプスの形成に必要な因子、促進的または抑制的に作用する因子などを研究する上で有用な道具となることが期待される. 運動感覚皮質のうち、前肢支配領域、後肢支配領域を分け、脊髄を頚髄、腰髄に分けて、4通りの組み合わせで培養すると、前肢-頚髄の組み合わせは前肢-腰髄の組み合わせよりfEPSPが大きかった.しかし、後肢-頚髄、後肢-腰髄の組み合わせ間には有意差が認められなかった.大脳皮質に対して脊髄の腹側を向けた場合と背側を向けた場合を比較すると、背側を向けた場合の方がfEPSPが大きかった.更に、fEPSPを100μmの格子状に記録し、その脊髄スライス内分布を検討すると、in vivoで皮質脊髄シナプスが存在する背側部で振幅が大きく、これは背側を皮質に向けたときばかりでなく、腹側を向けた時も同じ結果が観察された.バイオサイチンを皮質深層において皮質脊髄投射を前向性に標識するとその終末はfEPSPの分布と同じく脊髄背側のRexedのIV-VI層にほぼ一致した分布を示した.このようにこの標本ではin vivoと同じく、神経軸(neuraxis)に沿った方向(吻尾側)とそれに垂直な方向(背腹側)において投射の特異性が保たれていることが示された.この標本が皮質脊髄投射の部位特異性を研究する上で有用な標本であることが示された.
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