研究概要 |
(1)アミロイドβ蛋白よる神経毒性。アミロイドβ蛋白fibrillar formによりPC12細胞のTrk受容体のチロシン自己燐酸化反応が認められた。刺激後極めて短時間(10分)に最大となり1時間後には前値に復した。また下流に存在するMAPKやAktキナーゼもTrkと同様に一過性の活性化反応が見られ、これら反応は一種の細胞の防御反応と考えられた。(2)Trkを介する細胞内情報伝達系へのPS1変異の影響。変異型および野生型PS1を過剰発現する細胞ではリガンドであるNGFに対する反応性は明らかに低下しており、特に変異型細胞ではTrkは細胞膜上にはほとんど観察されず、細胞内に強い免疫反応が観察された。すなわち,変異型細胞では,Trkの正常な翻訳後修飾あるいは細胞内移送が障害されていることが示唆された。細胞内にGM1を欠く細胞(NG-CR72細胞)を用いTrkの局在を検討した結果、GM1などのガングリオシドがTrkの細胞内局在を規定している可能性が推測された。(3)βアミロイドの線維形成(重合)反応へのHMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)の影響。アミロイドβ蛋白の蛍光色素チオフラビン丁法による試験管内伸張反応を用いてアミロイドβ線維形成に及ぼすスタチンの効果を検討した。シンバスタチン以外のスタチン(プラバスタチン、アトロバスタチン、アトロバスタチンラクトン)は、アミロイドβ蛋白の試験管内伸張反応を阻害したが、この阻害作用は非常に高濃度を必要とするものであり、一般的臨床使用状況下で脳内βアミロイド斑の形成に関与するとは考えにくい。
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