研究概要 |
HHV-8はカポジ肉腫組織よりカポジ肉腫関連ヘルペスウイルスとしてその遺伝子断片が発見され,その後,カポジ肉腫をはじめとし,Castleman氏病,B細胞リンパ腫などに関与するウイルスであることが報告されている.また,HHV-8の遺伝子にはサイトカイン,ケモカイン,細胞周期の制御に関するヒト細胞遺伝子ホモログ(vIL-6・vIL-7・vIL-8R・vMIP-1s・vbcl-2・vcyclinなど)が存在することがわかっており,これらの遺伝子ホモログが上記の病気の発症に大きな役割を果たしていると考えられている.興味深いことに,HHV-8に感染しているカポジ肉腫の患者ではエイズ脳症の発症率が低くなるとの疫学的報告が出された.そして,そのメカニズムとして,HHV-8が持つケモカイン様遺伝子ホモログ(vMIPs)によりHIV-1のmicrogliaへの感染が阻害されているのではないかと推測している.しかしながら,vMIPsが実際にmicrogliaやmacrophageへのHIV-1の感染阻害に働いているのかどうか,vMIPsは中枢神経系内で直接に働いているのか,未梢血中でのmonocyteへのHIV-1の感染阻止に働くことでエイズ脳症の発症を抑えている可能性はないのか,この様なケモカイン遺伝子のホモログを使ってエイズ脳症やHIV感染症の進行を予防できる可能性があるのかどうかなどは全くわかっていない.我々はカポジ肉腫患者の検体を使い,その可能性についての検討を開始した.現在までに2年間の無症候性のHIV感染者140人のフォローアップおよびカポジ肉腫患者83人を調べたが、脳症を発症している患者は確認できなかった。これらの症例のサンプルは今後のvMIPの解析などのために保存されている。
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