研究概要 |
随意運動の制御への大脳皮質の関与を明らかにする為に、筋収縮維持および制止時における脳律動の解析を行った。 1.右示指の伸展運動をすばやく行った場合(phasic)と、伸展運動にひき続き等尺性収縮を2秒持続した場合(phasic-tonic)の脳磁場を5名の正常被験者において全脳型脳磁図計にて記録した。いずれの運動においても10Hz,20Hz帯域の背景脳磁場の脱同期化は、運動開始2,3秒前より始まり、10Hz帯域の脱同期化は1.5秒程度で回復した。これに対し、20Hz帯域背景脳磁場の脱同期化は、筋収縮の持続中引き続き認められ、運動の終了時と共に同期化を開始した。 2.片側上肢の手指もしくは手首の伸展筋の弱収縮を持続的に行った場合の、脳磁場活動と筋電図の律動波の関係を全脳型脳磁図計測データのコヒーレンスを用いて評価した。運動皮質近傍の脳磁場活動と筋電図のコヒーレンスは、15-20Hz帯域において共有の律動波を持っており、クロスコレログラムを用いた位相差より、両者の時間差が15ms程度であり、皮質脊髄路の伝達時間に相当することが示された。 3.難治性てんかん患者8名の長時間脳波モニター記録中に、等尺性筋収縮時の筋電図と脳皮質電図のコヒーレンスを解析した。1cm間隔で配置した電極のうち、電気刺激において上肢の一次運動野と定められた部分を中心に電極10個強において、平均周波数15Hzの有意のコヒーレンスを認めた。 持続収縮の維持において、局所脳活動の律動波の10Hz帯域と20Hz帯域は、それぞれ運動開始、維持に関与していることを示した。また、皮質-筋電図間の律動性の関連では、15Hz帯域が重要であることを示した。脳の局所の律動性と、皮質-筋肉間の律動性の関連は異なっていることが示唆された。
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