平成11年度同様、Macrophage type1 and type2 class-A scavenger receptor(MSR-A)ホモノックアウトマウス(MSR-A-/-)を用いて、Vitamin B6欠乏食下で飼育し、実験的isoniazid(INH)中毒を作製し、末梢神経の軸索変性に伴う2次性脱髄後に生じる変性ミエリンの動向を観察した。 野性型(MSR-A+/+)およびA/Jマウスにはごく軽度の軸索変性が見られるのみであった。一方、MSR-A-/-7匹のうち4匹には軸索径に比べて薄い髄鞘を持つ有髄線維が多数みられ、onion bulb(OB)も散在し、神経内膜内の浮腫も伴っていた。これらの4匹においてはOBは抗S-100抗体に陽性で抗酸化phosphatidylcholine(PC)抗体は神経内膜内をび慢性に染色し、特に髄鞘の外縁を濃染した。 元来マウスにはINH中毒による末梢神経障害は報告されておらず、INHの代謝酵素であるacetylatorの活性が低いストレインであるA/Jマウスでも軽度の軸索変性のみであり、MSR-A-/-に見られたこれらの所見はMSR-Aの存在意義を示すものと考えられた。さらに圧迫病変に示された酸化リン脂質がINH中毒でも出現したことは、軸索変性後の生体膜変化としての酸化過程の普遍性を示すものと考えられた。 本研究はINH中毒による末梢神経障害でonion bulbを形成させた最初の実験系でありonion bulbの形成を考える上で重要な示唆を与えている。
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