運動ニューロン疾患群の中で主要な位置を占める筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis ; ALS)は、神経筋疾患の中でも進行性難治性である。家族性ALSではCu/Zn superoxide dismutase(SOD)遺伝子に点突然変異が、孤発性ALSでは興奮性アミノ酸グルタミン酸トランスポーター(EAAT2)の異常が注目されている。 このようなバックグラウンドの元、我々はヒト異常SOD遺伝子(Gly93Ala)を導入したマウスを育成しており、本年度は、この遺伝性ALSのモデル動物においてEAAT2蛋白の脊髄における発現を、無症状で病理学的にも正常な18週、無症状であるが病理学的変化の始まっている25週、症状が発現している33週と時期を設定して抗EAAT2抗体で蛋白量を検討し、RT-PCR法にてmRNA量を測定した。また、ニューロンの生存シグナルに関してはphosphatidylinositol 3-kinase(PI3-K)-Akt経路について、前述の各時期について免疫組織学的に検討した。 ヒト異常SOD遺伝子(Gly93Ala)を導入したトレンスジェニックマウスの神経変性においてはEAAT2の系は変化はなく、PI3-K-Akt経路は関与していることを示唆する知見が得られた。
|