研究概要 |
1.パーキンソニズム・モデル脳内のメタロチオネイン-III(MT-III)mRNA発現の変化 片側黒質線条体路への6-hydroxydopamine(6-OHDA)注入によるパーキンソニズム・モデルモデルラットを用いて,脳内基底核におけるMT-III mRNA発現とlevodopa投与後の変動について解析した.正常側の線条体,黒質におけるMT-III mRNA発現は,levodopa投与により有意に増加した.これはlevodopaによって発生する酸化ストレスに対する生体防御反応と考えられる.一方,6-OHDA投与側の線条体ではMT-III mRNA発現は有意に減少しており,正常側でみられたlevodopa投与による増加反応はみられなかった.6-OHDA投与側の黒質ではMT-III mRNAの増加傾向がみられ,levodopa投与により発現は著しく増加した.これらのことから,パーキンソン病脳では生体側のラジカル消去能が低下しており,levodopa投与により正常であれば生じるはずのMT-III mRNA発現の誘導がみられないために病態が進行するという可能性が示唆された. 2.加齢に伴う脳内MT-III mRNA発現の変化 パーキンソン病発症基盤である加齢の脳内MT-III mRNA発現への影響と,酸化ストレスによるその誘導性の変化を老齢ラットを用いて検討した.MT-III mRNAの発現は脾臓では認められず,脳内において特異的に発現することを確認した.線条体および視床+中脳でのMT-III mRNA基礎発現量は老齢ラットでは増加していた.加齢に伴い脳内の特に基底核でのMT-III発現量は代償性に増加していると考えられる.また,老齢ラットの視床+中脳,線条体では,若齢ラットでみられるlipopolysaccaride投与によるMT-III mRNA発現の誘導が起こらず,むしろ抑制されていた.これは加齢に伴い酸化ストレスに対する基底核のMT-IIIの誘導性が低下していることを示している.
|