研究概要 |
1.培養神経細胞(CATH.a)におけるメタロチオネイン-III(MT-III)発現の検討 昨年度,ドパミン系細胞株B65とグリア系細胞株C6においてMT-IIIの発現が認められなかったことから,MT-IIIを発現している神経細胞株の検索を行った.マウス由来ドパミン系細胞株であるCATH.aにおいてMT-III mRNAの発現がみられることを,MT-III cDNAの3'-非翻訳領域に対する特異的primer setを用いたRT-PCR法で証明した. 2.分化誘導によるドパミン神経細胞株でのMT-IIIの発現と動態に関する検討 ドパミン神経細胞における増殖抑制因子としてのMT-IIIの発現と動態について検討した.マウス由来ドパミン系神経細胞株CATH.aをジブチリルcAMPを用いて分化させると,MT-III mRNAの発現が増加し,さらにマウス脳由来抽出液を添加すると分化した細胞において特異的に細胞死が見られた.また,MT-III cDNAを挿入した蛍光タンパクGFP発現ベクターをCATH.a細胞に導入しGFP/MT-IIIの融合タンパクを発現させ,MT-IIIの細胞内局在を検討したところ,分化した細胞に脳抽出液を添加した場合にGFP/MT-III融合蛋白の細胞質から核への移行が見られた.以上の結果より,MT-IIIはドパミン系神経細胞の分化に伴って発現が増加し,脳由来抽出液中の因子との連関により細胞死が誘導される際に核内に移行することを明らかにできた.
|