研究概要 |
1.加齢と起炎刺激によるMT-IIIの発現分布の検討 起炎刺激lipopolysaccaride(LPS)投与によるMT-III蛋白の脳内発現・分布と,パーキンソン病発症基盤である加齢のそれらに及ぼす影響について老齢ラットを用いて検討した.MT-IIIは老齢ラットの前頭,頭頂皮質において発現が増加していた.LPS投与によるMT-IIIの著明な発現増加が若壮齢ラットの前頭,頭頂皮質において認められたが,老齢ではむしろ発現が減少していた.さらに,MT-III蛋白の神経・グリア細胞での発現比率を検討したところ,若壮齢対照群では大脳皮質のMT-IIIは神経,アストログリアで主に発現しているが,老齢対照群の前頭,頭頂皮質ではMT-III陽性ミクログリアが増加していた。さらに,LPS投与により若壮齢の大脳皮質において認められるMT-III陽性オリゴデンドロサイトとミクログリアの増加が,老齢では認められなかった.これらの結果は,起炎刺激により大脳皮質の特にオリゴデンドロサイトとミクログリアでみられるMT-IIIの発現誘導性が,加齢に伴い低下していることを示している. 2.MTノックアウトマウスにおけるドパミン神経障害 6-Hydroxydopamine(6-OHDA)による黒質線条体ドパミン神経障害におけるMT類の関与について,6-OHDA投与したMT-I, IIノッククアウト(KO)マウスを用いて検討した.MT-I, II KOマウスでは,6-OHDA(60μg)脳室内投与による黒質のチロシン水酸化酵素陽性ドパミン神経細胞の脱落がさらに増悪した.このMT-I, IIの機能欠失による6-OHDAのドパミン神経毒性の増強は,MT-I, IIはそのフリーラジカル消去能によりドパミン神経障害に対して防御的に働いている可能性を示している.
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