研究概要 |
1)新世代のアデノウイルスベクターの開発 遺伝子治療を目的とした新しい世代のアデノウイルスベクターをP1ファージCre/loxPシステムを用い作製した。この新世代アデノウイルスベクターはヘルパーウイルス依存型アデノウイルスで、アデノウイルスの殆どのDNAを欠失しており、その部分に約28kbのDNA断片をパッケージさせる事が可能であった。増幅過程を繰り返しウイルスタイターを上げられ、CsCl密度勾配超遠心にて1,000倍以上の濃縮が可能であった。この新世代アデノウイルスは第一世代アデノウイルスの問題点である免疫原性と小さなパッケージサイズを解決する手段になるものと期待される。 2)アデノウイルスレセプターの強制発現による2回目以降のアデノウイルスベクターによる遺伝子導入効率の改善 アデノウイルスベクターによる遺伝子導入では初回の導入効率は良いが2回目以降は低下することが知られている。そこで組み換えアデノウイルスベクターを用いアデノウイルスレセプター(human groupB coxsackie and adenovirus serotype 2 and 5 receptor;hCAR)をヌードマウス骨格筋に強制発現させ、2回目以降のアデノウイルスベクターによる遺伝子導入効率を改善した。今回の実験ではLacZを初回感染のマーカーとして、GFPを2次感染のマーカーとして用い、2つのマーカーとも多数の同一の筋線維で発現させることができた。また観察した範囲では、CARの強制発現による筋線維の膜構造への影響は認められなかった。今回の結果は、遺伝性筋疾患への遺伝子治療の展開に新しい可能性を示すものと思われる。
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