研究概要 |
1)新世代のアデノウイルスベクターの開発 遺伝子治療を目的とした新しい世代のアデノウイルスベクター(gutless adenovirus)をP1ファージCre/loxPシステムを用い作製した。この新世代アデノウイルスベクターはヘルパーウイルス依存型アデノウイルスで、アデノウイルスの殆どのDNAを欠失しており、その部分に30kb以上のDNA断片をパッケージさせる事が可能であった。増幅過程を繰り返しウイルスタイターを上げ、CsCl密度勾配超遠心にて1,000倍以上の濃縮が可能であった。更に、パッケージさせるDNA構造や、ヘルパーウイルスの構造を検討し、生体でも使用出来る様な、高力価でヘルパーウイルス混入の少ないウイルスストックを得る事に成功した。この新世代アデノウイルスは第一世代アデノウイルスの問題点である免疫原性と小さなパッケージサイズを解決する手段になるものと期待される。 2)アデノウイルスレセプターの強制発現による2回目以降のアデノウイルスベクターによる遺伝子導入効率の改善 マウス筋芽細胞株C2C12に比較的高い力価(MOI250)のヒトCAR(hCAR)cDNAとマーカーとしてLacZを同時に発現するAdvを感染させた。ひき続き行ったGreen fluorescence protein(GFP)を組み込んだAdvの感染では比較的少量(MOI25)でも十分に遺伝子導入が可能であった。さらにマウスの骨格筋に直接投与した場合でも同様の効果が見られ、かつCARの強制発現によって筋形質膜の構築には明らかな影響はみられなかった。今回の研究の結果はAdvによってCARと治療遺伝子を共発現させることが骨格筋のAdvに対する感受性の問題を解決できる可能性があることを示し、遺伝性筋疾患の遺伝子治療の臨床応用のために新しいストラテジーを提示している。
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