研究概要 |
sarcoglycan複合体を欠損する重症の肢帯型筋ジストロフィーである sarcoglycanopathyにおける筋細胞死の分子発病機序はまだ不明である.本研究ではsarcoglycan複合体を欠く非筋細胞におけるdystroglycan複合体の脆弱性を検討するために,そのような細胞の代表であるシュワン細胞のdystroglycan複合体の分子構築を解析した.β-dystroglycanとDp116(分子量116kDaのdystrophinホモローグ)の末梢神経における局在を免疫電顕で観察した.β-dystroglycanとDp116の融合蛋白を作製,両者の結合をブロットオーバーレイ法で検討した.末梢神経抽出液を用い,抗β-dystroglycan抗体で免疫沈降実験を行った.β-dystroglycanとDp116はシュワン細胞の外膜に共在した.β-dystroglycanはDp116と結合しその結合部位は2ケ所あった.免疫沈降ではごく少量のα-dystroglycanがβ-dystroglycanと共沈したが,Dp116とlaminin-2は沈降しなかった.これらのことは、(1)シュワン細胞においてdystroglycan複合体はDp116により裏打ちされている,(2)しかしシュワン細胞のdystroglycan複合体は骨格筋のそれに比べてはるかに脆弱である,ことを示唆した.つまりdystroglycan複合体はsarcoglycan複合体を欠く非筋細胞においては筋細胞におけるよりもはるかに脆弱であると予想される.
|