非弁膜症性心房細動(NVAF)患者において脳卒中の重症度に及ぼす危険因子、凝固亢進状態、抗血栓療法の影響を検討した。対象は急性虚血性脳卒中を生じたNVAF連続100症例であり、方法は脳梗塞の大きさ、退院時の転帰、脳卒中の危険因子(75歳以上、収縮期高血圧、うっ血性心不全、左房拡大、心内血栓)を調査し、凝血学的マーカーとしてβトロンボグロブリン(βTG)、血小板第4因子(PF4)、トロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT)、Dダイマー(DD)の測定結果を解析した。抗血栓薬はアスピリン、チクロピジン、ワーファリンが投与されており、ワーファリン投与例ではINRを調査した。大梗塞(>15mm)と退院時の転帰不良(死亡または自立不能)は75歳以上、心不全、左房拡大、TAT増加、DD増加を認めた患者で認めなかった患者より多かった。大梗塞と転帰不良の比率はβTGとPF4の増加例と非増加例の間に差はなかったが、TATとDDの増加例では非増加例より高率であった。大梗塞の比率は抗血栓薬非投与例(80%)よりワーファリン投与例(42%)で低率であったが、抗血小板薬投与例(71%)では差がなかった。さらに、ワーファリン投与例での大梗塞の比率はINR2.0以上の患者(14%)でINR2.0未満の患者(80%)より低かった。以上の結果より、75歳以上、心不全、左房拡大は凝固活性化とともに大梗塞と転帰不良の危険因子となり、脳卒中の重症度は標準的な強度のワーファリン療法により軽減しうるが、弱いワーファリン療法や抗血小板療法では軽減できないと考えられた。
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