急性虚血性脳卒中で入院した非弁膜症性心房細動(NVAF)患者において梗塞巣の大きさ、退院時の転帰と、血液凝固マーカー、経食道心エコー所見、抗血栓療法の効果との相関について検討した。大梗塞(>15mm)と退院時の転帰不良(死亡または自立不能)は、75歳以上、心不全(臨床的または心エコー上)、左房拡大(>40mm)、トロンビン・アンチトロンビンIII(TAT)増加、D-ダイマー(DD)増加を認めた患者群で認めなかった患者群より有意に多く、抗血栓薬非投与群でワルファリン投与群より有意に多く、ワルファリン投与群ではINR2.0未満の患者群で2.0以上の患者群より有意に多かった。一方、重篤な出血合併症(頭蓋内出血および頭蓋外大出血)は75歳以上ではINR2.5以上の患者群で2.5未満の患者群より有意に多く、75歳未満では両群間に有意差がなかった。以上の結果より、75歳以上の高齢、心不全・左房拡大の合併、凝固・線溶活性化、抗血栓療法未施行は大梗塞と転帰不良の危険因子であり、大梗塞と大出血を回避するためのワルファリンの至適用量は75歳未満では通常推奨されている2.0〜3.0でよいと考えられたが、75歳以上では2.0〜2.5の範囲に限定したほうがよいと考えられた。また、脳卒中未発症のNVAF患者群との相違も検討したところ、脳卒中合併群では非合併群よりTATとDDの増加のみならず、血中のβトロンボグロブリンと血小板第4因子の増加、Pセレクチン発現血小板の増加も有意に多かったことから、NVAF患者では血小板活性化も脳卒中の危険因子になりうると考えられた。
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