筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態機序にアストロサイトに存在するグルタミン酸トランスポーターの異常が関与しているかどうかを調べるため、ALS症例(20例)および対照例(20例)の脊髄をanti-human excitatory amino acid transporter 1(EAAT1)およびEAAT2を用いて免疫組織学的に検索した。剖検時に切り出した脊髄をホルマリンに固定し、パラフィンに包埋した後、EAAT1とEAAT2を用いABC法にて可視化した。対照例では、脊髄灰白質はEAAT1とEAAT2で免疫活性を示したが、白質は染色されなかった。ALS症例では、運動ニューロンの脱落にもかかわらず、EAAT1の免疫活性はよく保たれていた。他方、前角のEAAT2の免疫活性は前角細胞の脱落程度とよく関連しており、前角細胞の減少が軽度の症例では免疫活性がよく保たれていたが、前角細胞の減少が高度の症例では著明に低下していた。また、変性した前角細胞は正常と思われる前角細胞に比較して、しばしばより強いEAAT1およびEAAT2の免疫活性を示した。これらの結果は、ALSの病態機序にEAAT2の選択的減少が関与していることを示唆するものであり、変性した前角細胞に接しているアストロサイトの突起では、増加した細胞外のグルタミン酸を低下させるためにグルタミン酸トランスポーターの代償機転が働いているものと考えられる。
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