筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態機序にグルタミン酸トランスポーターの異常が関与しているかどうかを調べるため、ALS症例および対照例の脊髄をEAAT1およびEAAT2を用いて免疫組織学的に検索した。対照例では、脊髄灰白質はEAAT1とEAAT2で免疫活性を示したが、白質は染色されなかった。ALS症例では、EAAT1の免疫活性はよく保たれていた。他方、前角のEAAT2の免疫活性は前角細胞の脱落程度とよく関連しており、前角細胞の減少が高度の症例では著明に低下していた。これらの結果は、ALSの病態機序にEAAT2の選択的減少が関与していることを示唆している。 また、誘導型nitric oxide synthase(inducible NOS:iNOS)とnitrotyrosine(NT)の抗体を用いて、変異SOD1遺伝子を導入したトランスジェニックマウス(Tg)の脊髄を経時的に免疫組織学的に観察し、本動物モデルの運動ニューロンの変性に酸化的ストレスが関与しているか否かを検索した。対照マウスでは、いかなる病期においてもiNOSあるいはNTの免疫活性はみられなかった。他方、Tgの脊髄前角細胞では、iNOSあるいはNTの免疫活性が認められた。24週令のマウス(前発症期前期)では、前角細胞およびその突起にときどきiNOSあるいはNTの免疫活性がみられ、28週令のマウス(前発症期後期)では、まれならず認められた。32週令のマウス(発症期前期)および35週令のマウス(発症期後期)では、前角細胞の胞体と同様に増生した反応性アストロサイトにも、iNOSおよびNTの免疫活性が頻繁に認められた。このTgにおける運動ニューロンの変性過程の病態機序に酸化的ストレスが関与していることを示唆している。
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