研究課題/領域番号 |
11670647
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
紙野 晃人 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (40307955)
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研究分担者 |
太田 成男 日本医科大学, 老人病研究所, 教授 (00125832)
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キーワード | アルツハイマー病 / アルデヒド脱水素酵素 / ミトコンドリア / フリーラジカル / 神経細胞死 / アポリポ蛋白E / トランスジェニック / アポトーシス |
研究概要 |
ミトコンドリア型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)欠損(ALDH2*2アレルキャリヤー)は高齢発症型アルツハイマー病(発症年齢65歳以上、以下LOAD)の遺伝的リスクであることはすでに報告した。今回、患者127名、非痴呆281名を対象として、LOADのライフタイムリスク(平均寿命におけるLOAD発症リスク)を推定したところ、アポリポ蛋白E-ε4アレルは10.9倍(p<0.0001)、ALDH2*2アレルは2.1倍(p=0.0016)のリスクとなった。今後さらに症例数を追加し、発症予測への応用を検討する。発現ベクターpCAGGSを用いたドミナントネガティブALDH2欠損マウスはF1に継代することができず、欠損マウス系統の保持は成功しなかった。さらに発現ベクターpF1BOSを用いて同様に欠損マウスの作成を試みたが、欠損マウスの出生は得られなかった。したがって、マウスにおけるミトコンドリアでのアルデヒド毒性増大は発生生育過程への影響がヒトよりも重大であると考えられた。培養神経細胞においてALDH2欠損の影響を評価したところ、フリーラジカル産生が増大し、神経細胞死が惹起される傾向を認めた。以上の実験的事実より、次のように考察された。すなわち、ALDH2欠損により、ミトコンドリア内部でのアルデヒド代謝が遅延し、アルデヒド蓄積さらにそれに附随するフリーラジカル産生の増大が生じる。フリーラジカルの蓄積はミトコンドリア膜およびDNA損傷を生じ、アポトーシスシグナルすなわちチトクロムCの遊離をもたらす。神経細胞は多量のエネルギーを要求するため、この過剰なフリーラジカル産生をおこしやすい状態であり、相対的に細胞死に到りやすいと考えられる。一方、アポリポ蛋白E-ε4アレルはフリーラジカル処理能力が低下していることが知られている。結論として、アポリポ蛋白E-ε4アレル/ALDH2*2アレルキャリヤーは神経細胞死さらに中枢神経障害がおこりやすいため、LOADすなわち痴呆を惹起すると考えられ、LOADとフリーラジカル産生との関係が支持された。
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