傍腫瘍性小脳変性症に出現する抗小脳Purkinje細胞質抗体(Yo抗体)の病因における役割については不明な点が多い。この抗体の標的抗原であるpcd17蛋白については、転写調節活性の役割が推定されている。この神経抗原の転写調節における役割について検討を試みた。GAL1promoterの下流にβ-galactosidase reporter活性をもつ遺伝子を含む酵母細胞を用いたone-hybrid assayでは、pcd17 cDNAは明らかな転写活性を認めた。しかしながら、NF-kBの結合コンセンサス配列の下流にfirefly luciferase遺伝子をもつレポーター遺伝子と共にpcd-17遺伝子をNB-1細胞とCOS細胞に導入し、そのluciferase活性を測定したところ、NF-kBの転写活性はpcd17を導入することにより用量依存性に有意に抑制された。さらに、TNF-α(10ng/ml)による刺激後にNF-kB転写活性もpcd17cDNAの導入により抑制された。血清の存在下に培養した細胞でのSRF転写活性に対するpcd-17遺伝子の有意な影響は認められなかった。NF-kBの転写因子DNA結合コンセンサス配列への神経抗原蛋白の結合の明らかな結合は認められず、細胞質におけるIkBの量的な変化は認められなかったが、主にNF-kBのp50homodimerのDNA結合能が、pcd17を導入することにより有意に抑制されることが明らかになった。今回の結果から、pcd17は転写機能調節の活性と抑制の二重の働きをすることが証明され、NF-kBの活性の調節を通じて小脳プルキンエ細胞の代謝や抗神経細胞抗体や細胞傷害性T細胞の認識に重要な働きをしていることが示唆された。
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