傍腫瘍性神経症候群にみられる免疫現象を実験動物のin vivoで誘導し得るかについて検討する目的で、本症候群の腫瘍神経共通抗原であるpcd17とple21をコードするcDNAを用いて、遺伝子銃を使ったDNA免疫の方法によりin vivoにおける免疫応答を解析した。その結果、マウスに対していずれのDNA免疫においても、血清中に効率よく神経細胞抗体を産生させ得ることができた。また、pcd17cDNAを用いたDNA免疫により、神経抗原に対する細胞障害性T細胞を誘導し得ることも明らかとなり、DNA免疫によって実験動物に対して傍腫瘍性神経症候群にみられるような神経抗原に対する免疫応答を誘導し得ることを示した。このDNA免疫を用いた新たな実験系は、傍腫瘍性神経症候群のin vivoでの免疫現象を今後解析していく上で有用であると考えられる。 細胞障害性T細胞の抗原認識には組織適合抗原class I分子の発現が必要であるが、一般に神経細胞にclass I抗原の発現はみられない。我々は、神経芽細胞腫を用いてflavoid抗酸化物質によってclass I抗原を誘導し得ることを証明した。その発現の機序は、class I抗原遺伝子のプロモーター領域に位置するE-boxモチーフにこの物質が直接あるいは間接的に作用して発現していることを示し、このような物質の刺激を介した刺激により神経細胞におけるclass I抗原の発現が誘導することが可能であることを示すと共に、脳炎等の疾患においてこの抗酸化物質を用いる可能性を示した。
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