DRPLAは異常伸長するCAG repeatをもつDRPLA遺伝子の遺伝子産物(DRPLA蛋白)が原因となり発症する。0.32M sucrose細胞分画法でヒ卜脳のDRPLA蛋白の細胞内分布を検討するとDRPLA蛋白は主に核分画に分布し、ラット脳では可溶性分画に分布した。抗DRPLA蛋白抗体によるヒト、ラット脳の免疫組織染色ではDRPLA蛋白は神経細胞の細胞質に局在し、特にラット脳では細胞分画結果と免疫組織染色の結果は一致しラットDRPLA蛋白は細胞質に存在した。一方、ヒトDRPLA蛋白が集合し核類似の高分子蛋白として神経細胞の細胞質に存在する可能性を示した。ヒトDRPLA蛋白の集合体形成は、抗DRPLA蛋白抗体の免疫組織染色で免疫反応が細胞質でclusterを形成する所見と合致した。ラット脳の免疫組織染色ではDRPLA蛋白のclusterは認めず均一に細胞質に存在し、ラットDRPLA蛋白はヒトDRPLA蛋白の存在様式とは異なった。次にヒト脳を非還元条件下で電気泳動したイムノブロットで検討すると、抗DRPLA蛋白抗体はゲルトップ上の高分子蛋白と免疫反応を示し、これはヒト脳でDRPLA蛋白がジスルフィド結合の高分子複合体を形成することを示した。ラット、ヒト脳のイムノブロットで比較すると、ヒトDRPLA蛋白に生じたジスルフィド結合の高分子複合体はラットDRPLA蛋白には生じにくかった。細胞分画法のDRPLA蛋白の細胞内分布がラットDRPLA蛋白では可溶性分画に多くヒトDRPLA蛋白では核分画に多いことから、ラットDRPLA蛋白はモノマーとして細胞質に存在し、ヒトDRPLA蛋白はジスルフィド結合の影響を受けやすい集合体として細胞質に存在した。さらに非還元条件でのDRPLA脳とヒトコントロール脳のイムノブロットを比較検討すると、DRPLA脳ではDRPLA蛋白はより高度の高分子複合体を形成することを示し、異常伸長したポリグルタミンをもつDRPLA蛋白が原因となり高度のDRPLA蛋白複合体を形成することが推定された。
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