研究概要 |
強力なアポトーシス阻害因子であるヒトIAPファミリータンパク、XIAPはN末端側にIAPの特徴であるBIRモチーフを3回繰り返す構造を、C末端にRINGフィンガーモチーフを持っている。申請者らはXIAPがアポトーシスの実行因子であるカスペース3,7の阻害因子であり、その阻害作用はBIR2モチーフに担われていることを明らかにした。本年度の研究で行った酵素学的な解析により、XIAPはカスペース-3に対しては競合的阻害因子、カスペース-7に対しては非競合的阻害因子として作用することが明らかになった。XIAPの構造機能解析によって、148番目のアスパラギン酸(D148)がカスペース-3/7の競合的阻害に、またBIR2モチーフがカスペース-7の非競合的阻害に必要であることが示された。(J Biol Chem,2001)。一方RINGフィンガーの役割は不明であったが、最近、RINGフィンガータンパクがユビキチン・プロテアソームたんぱく質分解経路で重要な役割を果たすユビキチンリガーゼ(E3)であることがわかった。E3はユビキチン化される基質蛋白を特異的に認識する酵素である我々は、XIAPがRINGタイプE3としてカスペース3をユビキチン化する作用があることを見いだした。我々は活性型の立体構造をとるカスペース3の人工変異体(リバースカスペース3)を用いて、XIAPがin vitro及びin vivoで活性型カスペース3に結合した後、E3活性によってカスペース3をユビキチン化し、プロテアソームによる分解へと導くことを見いだした。さらにこのE3活性がXIAPによるFasを介するアポトーシス防御作用を増強する作用のあることを明らかにした(PNAS,2001)。さらにXIAPに結合し、その活性を阻害するミトコンドリア由来の細胞死誘導作用を持つセリンプロテアーゼ、HtrA2を同定した(Mol Cell,2001)。
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