研究概要 |
老化現象と全身の血管の動脈硬化を示すklothoマウスの表現型はklotho遺伝子の異常に起因している.我々はklothoマウスの大動脈と骨格筋細動脈で内皮細胞機能異常が存在し,この内皮細胞機能異常が一酸化窒素(NO)産生低下であることを明らかにした.klothoマウスの大動脈内皮細胞のNO合成酵素は,免疫組織染色でその発現が低下していた. さらに,高血圧,糖尿病,高脂血症,肥満を合併するOLETF(Otsuka Long-Evans Tokushima fatty)ラットにおいて血管内皮機能低下と腎臓でのklotho mRNA発現の低下が存在することを明らかにした.OLETFラットにアンジオテンシン変換酵素阻害薬キナプリル(5mg/kg/日)を10週間経口投与し,アセチルコリンによる大動脈内皮依存性血管弛緩反応,腎臓のklotho mRNA発現,尿中NO代謝物排泄を検討した.キナプリルは内皮依存性血管弛緩反応とNO産生を改善させたばかりでなく,腎臓におけるklotho mRNA発現を増加させた.高血圧,糖尿病,高脂血症,肥満の重積した病態において,キナプリルは血管内皮機能とklotho遺伝子の発現を改善し,動脈硬化を予防する可能性がある.
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