可溶性Fasはアポトーシス抑制因子の一つである。このsFasの投与は、心不全の予後を改善させる新たなる対症療法ではない根本治療と成りうることが考えられる。本研究は、心不全の分子病態学的なメカニズムの解明ならびに、sFas投与により慢性心不全の長期予後を改善できるか否かを陳旧性心筋梗塞ラット心不全モデルを用いて検証するものである。 平成11年度は、ラット心不全モデルにおける血漿sFas濃度とその予後の検討と題し、ラット心不全においても、ヒトと同様に血漿sFasが上昇するか?、心不全の進行と共にsFasが上昇できる例は予後が良好か?を明らかにすることであった。 用いた対象は、心不全作成用6週令ラットが30匹とコントロール(シャム術施行)6週令ラットが30匹である。我々は、これらの6週令ラットの左冠動脈近位部を結紮し、左室自由壁陳旧性心筋梗塞による重症心不全モデルを作成することに成功した。これらのラットは、心筋梗塞後7日目に心電図をとり、ほとんどのラットで左室自由壁陳旧性心筋梗塞を確認できた。 現在、12週間ラット重症心不全モデル各群の血漿sFas濃度を経時的に測定し、また生存率を比較検討している段階である。 今後は、心筋梗塞後12週目の生存ラットの血行動態を各群で比較する。また、心筋組織を用いてアポトーシス関連因子Fas、sFas、Fas-L、sFas-LをELISAにより検討する。さらに、組織切片より光顕的TUNEL、Ladder、電顕及び電顕的TUNELにてアポトーシスの有無を検討する。FasおよびFas-Lについて蛋白レベルではWestern法と免疫組織法にて、mRNAレベルではPCR法、Nothern法とin situ hybridizationにて検討する予定である。
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