研究課題/領域番号 |
11670671
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岩瀬 三紀 名古屋大学, 医学部, 助教授 (20303646)
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研究分担者 |
長谷川 高明 名古屋大学, 医学部, 教授 (80198720)
長坂 徹朗 名古屋大学, 医学部, 助教授 (40262894)
横田 充弘 名古屋大学, 医学部, 助教授 (50201851)
北市 清幸 名古屋大学, 医学部, 助手 (40301220)
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キーワード | エンドトキシンショック / 心エコー法 / 血小板活性化因子(PAF) / 心機能 / 病理学 |
研究概要 |
心エコー法及び観血的血行動態評価を用いて心機能を詳細に解析し病理組織学所見と対比し、総括的にエンドトキシン発症早期における各種メジエータの役割、特に血小板活性化因子(PAF)の関与を多角的に検討した。 Klebsiella pneumoniae由来のLPS投与により、血圧は急激に低下し、約4時間後に前値に復した。LPSにより惹起される心臓のダイナミックな変容が明らかとなった。即ち、左室内径の著明な低下、左室心筋壁厚の増大、左室内径短縮率の増大を認めた。従ってKlebsiella pneumoniae由来のLPS投与によるエンドトキシンショック発症早期は左室前負荷および後負荷の著明な減少を左室収縮能亢進により代償不能な状態であると推察された。病理学的には左室心筋における毛細血管レベルのうっ血と間質の浮腫であった。血中カテコラミン及びヘマトクリット値の上昇を認め、代償性交感神経系の賦活化及び血管透過性の亢進が生じていることが推察された。またPAF阻害薬はこれらの所見を軽減したが、本実験系においてはLPS投与後にNOやアテノシンの血中濃度変化は認めず、これらのメジエータの関与は少ないことが示唆された。従ってKlebsiella pneumoniae由来のLPS投与によるエンドトキシンショック発症早期にはPAFが病態形成に重要な役割を担っていることが示唆された。 しかしながら,これらの所見はKlebsiella pneumoniae由来のLPSにのみ認められる可能性もある。実際われわれの予備実験において、Pseudomonas aeruginosおよびEscherihia coli由来のLPSに対する血圧動態、心機能動態はKlebsiella pneumoniae由来のLPSとは異なることを観察している。確かに臨床の場におけるエンドトキシンショックの病態の多様性、各種薬剤の乏しい効果は、エンドトキシンショックのメジエータの多様性がその一因であろうと推察される。今後さらに菌種による心血管系動態の相違点、およびそのメジエータを同定することは、有効なエンドトキシンショック治療法の開発に寄与するものと考える。
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