研究概要 |
心不全患者の心機能低下の原因の一つに心筋酸化ストレスの関与が想定されているが、最近開発された高感度酸化LDL(oxLDL)濃度測定系を用いて検討した。対象は正常者8名(胸痛で精査し、正常冠動脈)、拡張型心筋症(DCM)21名[左室駆出率(EF)<45%,NYHA I度(n=5),II度(n=16)]。その結果、oxLDL濃度は、正常者では大動脈-冠状静脈間で差異は認めなかった(9.5±1.0 vs.9.8±1.3U/mL)が、DCMでは大動脈-冠状静脈間で有意なoxLDLの増加を認めた(16.7±2.1 vs.29.3±3.5U/mL,p=0.0003)。oxLDLの大動脈-冠状静脈較差は、左室駆出率と有意な負の相関を認めた(r=-0.539,p=0.0026)。DCM患者で5名に抗酸化作用を有すると考えられているカルベジロールが投与されていたが、カルベジロール非投与患者に比し、心筋酸化ストレスの指標と考えられる大動脈-冠状静脈較差は有意に低下していた(1.1±1.4 vs.16.1±3.3U/mL,p=0.02)。これらの結果は、酸化LDL濃度の大動脈-冠状静脈較差は心筋酸化ストレスの臨床的指標として有用である可能性が示唆された。さらに神経体液因子との関係においては、angiotensin II,tumor necrosis factor α,endothelin-1の中では心筋酸化ストレスの亢進の原因としてendothelin-1との関係が最も強かった。
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