研究課題/領域番号 |
11670678
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
谷口 隆弘 神戸大学, 医学部・附属病院, 講師 (20263379)
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研究分担者 |
川嶋 成乃亮 神戸大学, 医学部・附属病院, 講師 (10177678)
石川 雄一 神戸大学, 医学部, 教授 (90159707)
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キーワード | 再狭窄 / 血管形成術 / 血管障害 / 血管外膜細胞 / 単球 / マクロファージ / 分化 / 筋原性転写因子 |
研究概要 |
血管形成術は、虚血性心疾患の有効な治療法であるが、血管形成術後の再狭窄が、30-50%の症例で見られ、その機序の解明と有効な治療法の開発が急がれている。再狭窄の機序として、中膜に存在する血管平滑筋細胞が内膜へ遊走し、そこで増殖、細胞外マトリックス産生を行うことにより新生内膜が形成されると考えられ、多くの研究がなされてきた。最近、再狭窄における血管外膜細胞の働きが指摘され注目されているが、その細胞起源を含めほとんど解明が進んでいない。そこで我々は、この血管外膜細胞の起源および細胞生物学的な機序を明らかとすることを目的とし、ラット頸動脈のバルーン障害モデルを用いて検討した。頸動脈障害後2日では、血管外膜周囲にBrdUを取り込む増殖細胞が見られたが、中膜内には見られなかった。その後、このBrdU陽性細胞は、中膜および内膜へと遊走するのが観察された。これらの細胞はα-SM actin、vimentin、およびミオシン重鎖のSMembに陽性のmyofibroblastであるが、血球由来の単球のマーカーであるED1に陽性で、レジデントマクロファージのマーカーであるED2には陰性であり、その由来は、流血中の単球であると考えられた。さらにこれらの細胞は、筋原性の転写因子であるMyf5、MEF2に陽性であったが、MyoD、Myogeninは陰性であった。また、ラット流血中の単球を分離培養したところ、培養直後より、ED1、Myf5陽性であったが、MEF2、MyoD、Myogeninは陰性であった。培養5日には、MEF2を発現し、その一部の細胞ではSMemb、α-SM actinも発現されていた。これらのことより、流血中の単球が、myofibroblastへと分化し得ること、さらに、これらの細胞が血管障害後の新生内膜形成に関与する事が示唆された。今後、さらに文化に関わる因子や、その細胞内情報伝達機構を明らかとすることにより、再狭窄の機序についての理解を深めるとともに、その治療法についても考えたい。
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