研究概要 |
脳卒中易発症高血圧ラット(SHRSP)は遺伝的に脳卒中を起こすラットであるが、同時にいくつか脂質代謝異常を持つことが知られている。なかでも、対照ラットに比べて低コレステロール血症と脂肪負荷時の反応性高コレステロール血症を来すことは興味深い。本研究では、このようなSHRSPの脂質代謝異常にかかわる遺伝子領域を、連鎖解析を用いて同定するともに、その遺伝子領域とSHRSPの遺伝的脳卒中易発症性との関連を明らかにする事を目的とした。 (a)SHRSP, WKY(SHRSPの対照ラット)を交配してF2ラット300匹を作製し、コレステロール負荷前後で、脂質代謝にかかわる形質を調べた。(b)つぎに、肝臓から抽出したF2DNAを用いて遺伝子型を解析し、脂肪負荷前後の各種形質をもとに連鎖解析を実施した。(C)連鎖解析の結果に基づいて、SHRSPの脂質代謝異常に関与する遺伝子が存在する領域のみをWKYと入れ替えたコンジェニックラットの作製を、5世代にわたる戻し交配を使ったスピードコンジェニック法を用いて試みた。これにより、SHRSPにおいて血清コレステロール値に影響を与える遺伝子座が第3,5,7,15,16染色体に、血清中性脂肪値に影響を与える遺伝子座が第8,16染色体に同定された。また、血清中性脂肪がHDLコレスレロールと逆相関する事、体脂肪量と相関することなどが明らかとなった。 次に、これらの遺伝子座の脂質代謝への影響を確認し、責任遺伝子を同定する目的でコンジェニックラットの作製を試みた。本年度、完成の予定であったが、ラットが事故のため途絶えてしまい、現在再度作製を開始したところである。
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