研究概要 |
平成11年度、頻脈誘発性犬心不全モデル(高頻度右室Pacing,250bpm)において、心筋興奮収縮連関異常のメカニズムを心筋小胞体機能の面から検討した。心不全では、1)筋小胞体(SR)のCa^<2+>放出channelであるリアノジン受容体(RyR)に特異的なligandであるポリライシンによるCa^<2+>放出能、また2)L型Ca^<2+> channelアゴニストのBay y-5959による、または化学的脱分極刺激を介したCa^<2+>依存性Ca^<2+>放出能、のいずれも低下していた。この際L型Ca^<2+> channelの数(Bmax)や親和性(Kd)には不全心と正常心の間に差がないためRyR自体の機能的異常が示唆された。一方、RyRには修飾蛋白であるFKBP12.6が1:4(RyR:FKBP12.6)のstoichiometryで結合しているが、心不全では1:4から1:1程度まで減少しており、その結果、RyRのchannel stabilityが失われ、RyRの構造変化を介して、異常なCa leakを生じていることが判明した(第72回 American Heart Association(平成11年11月)発表)。さらに、このRyRのchannel stabilityの低下はCa放出能低下の原因となっている可能性も示唆された(第64回日本循環器学会発表(平成12年3月))。本研究により、RyR-FKBP12.6 interaction障害による心機能低下という新しい心不全発現機序の可能性が示された。平成12年度は、さらに各種心不全治療薬が、この心筋興奮収縮連関異常の重要な原因と考えられるRyR channel stabilityの低下を改善するか否かまたその結果心機能が改善するか否かを検討する。
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