研究概要 |
平成11年度に、我々は頻脈誘発性犬心不全モデルにおいては、心筋筋小胞体(SR)のCa2+放出channelであるRyanodine受容体(RyR)とその修飾蛋白であるFKBPの結合比率が1:3.6→1:1.6と低下ている結果、チャネルの安定性が失われ、RyRの構造変化を伴う異常なCa^<2+>leakが出現することを示したが、平成12年度には、このFKBP-RyR連関異常がSRからのCa2+放出異常にどの程度関与しているかを検討した。【方法】高頻度右室ペーシング(250bpm,4week)により作成した心不全犬(n=6)および正常犬(n=6)の左室心筋よりSRを精製した後、Ca2+indicatorとしてarsenazoIIIを用い、stopped-flow装置により、SRからのCa2+放出の時間経過をモニターした。また[3H]ryanodineと[3H]FK506の受容体結合実験を膜濾過法あるいはLH20カラム法を用いて行った。【結果】RyRに特異的なligandであるpolylysine(PL)(0.37mM)によるCa2+放出速度は正常心筋に比し、不全心筋では61%減少していた(p<0.01)。30mMFK506(FKBPの特異的なligandで、RyRからFKBPを解離させる)は、PLによるRyRからのCa2+放出速度を正常心筋で67%減少(p<0.01)させたのに対し、不全心筋ではPLによるCa2+放出に更なる影響を及ぼさなかった(p=ns)。またFK506(30mM)は、PL添加時の[3H]ryanodine結合量(RyRの活性化状態)を正常心筋では14%減少させたが(p<0.05)、不全心筋では不変であった(p=ns)。[3H]FK506の結合実験では不全心筋においてFKBP数(Bmax)が正常心筋に比し77%減少(p<0.05)していたが、親和性は不変であった(p=ns)。【総括】不全心筋ではRyRに結合しているFKBPの数が著明に減少しており、その結果、RyRの構造変化→channel機能変化→Ca2+放出機能障害→心収縮機能障害という一連の心機能異常を生じていることが示唆された。
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