研究概要 |
心不全は心筋の収縮、弛緩の障害を基盤とする症候群であり、その原因として心筋細胞内Ca2+調節の異常が最近注目されている。従来より、心不全では、SRのCa^<2+>-ATPaseが蛋白、遺伝子レベルともにその発現が低下しており、その結果Ca^<2+>-ATPase活性低下に伴うCa^<2+>取り込み能障害を生じ、拡張期に心筋細胞内Ca^<2+>overloadひいては収縮、拡張障害をきたすと考えられてきた。一方、我々は、平成11年度、SR Ca放出チャネルであるRyRにも機能異常があり、このRyR機能異常も心不全時の収縮、拡張障害の要因とないうることを示した。すなわち、頻脈誘発性犬心不全モデルにおいて、RyRには、通常、その修飾蛋白であるF Kbinding protein(FKBP:骨格筋はFKBP12、心筋はFKBP12.6)が1(RyR)対4(FKBP)の比率でRyRに結合しているが、頻脈誘発性犬心不全モデルにおいては、この結合比率が1:3.6→1:1.6と低下している結果、チャネルの安定性が失われ、RyRの構造変化を伴う異常なCa^<2+>leakが出現することを示した(Circulation 102:21312136,2000)。また強心薬の心機能に及ぼす効果もSR機能の面から検討し、PDE阻害薬のミルリノンはドブタミンに比し、SR CaATPaseのcAMPに対する感受性増強効果が強く、心不全時の拡張能改善に有効であることが示された(Am J Physiol278:H313-H320,2000)。平成12年度にはさらに、心不全時のRyRのCa放出能低下も、RyR-FKBP連関障害ににより引き起こされていることが判明した(Cardiovasc Res 2000 48:323-331)。これらの一連の研究により、RyR機能異常が心不全時の心機能障害に密接に関与していることが示された。
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