本年度は新規エンドセリン{ET-1(1-31)}の生理的意義を明らかにした。 1)新規エンドセリン{ET-1(1-31)}の生理作用: ET-1(31)は血管を10^<-8>M以上で濃度依存性に収縮した。その作用は従来のエンドセリン{ET-1(1-21)の数十分の1の強さであった。血管内皮細胞における一酸化窒素(NO)産生能についてはET-1(1-31)がやや弱い作用であった。ET-1(1-31)の作用は血管平滑筋においてはET_A受容体の阻害薬(BQ-485)で抑制され、内皮のNO産生はET_B受容体阻害薬(BQ-788)により抑制された。 2)動脈硬化病変におけるET-1(1-31)の局在: ET-1(1-31)の抗体を作り、ヒト冠動脈硬化病変、頸動脈病変におけるキマーゼ、mast cellおよびET-1(1-31)の局在を明らかにした。正常血管においてはmast cellがET-1(1-31)が、ごくわずかに外膜側にみられるのみであったが、動脈硬化部位にはmast cellが多数見られた。キマーゼ、ET-1(1-31)は、同時にヒトmast cell内に存在しており、mast cellがET-1(1-31)を産生している可能性が考えられ、動脈硬化の進行との関与が考えられた。また、急性心筋梗塞の患者においては、ET-1(1-31)が長期間上昇を示しており、急逝心筋梗塞のリモデリングにも重要な役割を果たしていることが示された。
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