心不全における中枢性交感神経活動亢進機序の解明

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11670689
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 廣岡 良隆 九州大学, 医学部・附属病院, 助手 (90284497)
• 研究分担者: 市来 俊弘 九州大学, 医学部・附属病院, 助手 (80311843)
• キーワード: 一酸化窒素 / アンジオテンシン / 心不全 / 遺伝子導入法 / 血圧 / 心拍数 / 交感神経系 / 脳

研究概要

1.心不全における交感神経亢進機序として延髄孤束核のレニン-アンジオテンシン系の活性化が関与していることを報告した。すなわち、ラット動静脈シャントモデルを作成し、血行動態上、心不全を呈し、交感神経活動が亢進していることを確認し、延髄孤束核にアンジオテンシン受容体拮抗薬を微量注入することで交感神経活動抑制が心不全モデルでコントロールラットより大きいことを見い出した。さらに、延髄におけるアンジオテンシン変換酵素のmRNA発現が心不全群で大きいことから同部位でのレニン-アンジオテンシン系の活性化が心不全で生じていることが強く示唆された(論文発表)。
2.一酸化窒素合成酵素遺伝子をラットの延髄孤束核内へ過剰発現させ同部位での一酸化窒素産生を増加させると血圧・心拍数が低下し、尿中ノルエピネフリン排泄量が減少することを観察した。遺伝子導入はアデノウイルスをベクターとして行い、対照としてβガラクトシダーゼ遺伝子を導入したラットを用いた。遺伝子導入は免疫染色やWestern blot analysisによって確認した。また、酵素活性はnitrite and nitrateをin vivoマイクロダイアリーシス法を用いて行った(論文発表)。
3.マウスを用いて冠動脈を結紮して心筋梗塞を作成し心不全モデルとして現在、実験をおこなっている。このモデルでは心エコー図法で左心室拡大・左心室収縮能低下および尿中ノルエピネフリン排泄量低下が観察された。さらに、脳幹部一酸化窒素合成酵素をWestern blot analysisで定量すると心不全マウスでは同酵素が低下していることを見い出している(Experimental Biology 2001で発表)。このモデルに対して、一酸化窒素合成酵素遺伝子導入を行い、現在実験を進めている。

研究成果

• [文献書誌] Shigematsu H,Hirooka Y, et al: "Endogenous angiotensin II contributes to sympathetic activation in rats with aortocaval shunt"American Journal of Physiology. (印刷中). (2001)
• [文献書誌] Matsuo I,Hirooka Y, et al: "Glutamate release via NO production evoked by NMDA in the NTS enhances hypotension and bradycardia in vivo."American Journal of Physiology. 280(印刷中). (2001)
• [文献書誌] Sakai K,Hirooka Y, et al: "Overexpression of eNOS in NTS causes hypotension and bradycardia in vivo."Hypertension. 36. 1023-1028 (2000)
• [文献書誌] Eshima K,Hirooka Y, et al: "Angiotensin in the nucleus tractus solitarii contributes to neurogenic hypertension caused by chronic nitric oxide synthase inhibition."Hypertension. 36. 259-263 (2000)
• [文献書誌] 廣岡良隆: "脳内遺伝子導入法における循環調節機序の解明"最新医学. 55・4. 927-930 (2000)
• [文献書誌] 廣岡良隆: "心不全例における血圧調節機構"呼吸と循環. 48・4. 333-338 (2000)
• [文献書誌] 廣岡良隆,竹下彰: "脳内NOと血圧調節。「高血圧」"日本臨床社. 35-38 (2000)
• [文献書誌] 廣岡良隆,岸拓弥: "TREND。「高血圧ナビゲーター」"メディカルレビュー社. 192-193 (2000)