研究概要 |
心筋梗塞(MI)では梗塞部心筋の線維化と非梗塞部の肥大が知られている。しかし、本病態における細胞外matrix成分のリモデリング過程は不明である。本研究では梗塞心筋と非梗塞部のMMP活性とTissue inhibitors(TIMP)活性について検討した。雄性Wistarラットの左冠動脈を結紮しMIを作成し、結紮後1、2、7、14、28日後に心臓を摘出し梗塞部(IF,n=8)と非梗塞部位(NIF,n=8)に分けた。両群の組織中のhydroxyprolone(HP)量とcollagen(CL)(I型,III型)のmRNA(Northern blot)およびfibronectin(FN)のmRNAを求めた。Collagenの分解に関するMMP-1,MMP-2,MMP-3,TIMP-1,TIMP-2,TIMP-3活性はimmunoblotにて、mRNAの発現はRT-PCR法で求めた。TIMP/MMPと比として表し、梗塞サイズはTTC 染色により求めた。その結果(1)IFは冠結紮後1日目でCL-I,CL-IIIのmRNAは増加し2日目がそれぞれ結紮前に比べて約4倍に発現増加した。CL-Iが以後漸減したが、CL-IIIの増加は28日目まで続いた。FNの淡白とmRNAの発現は7日目(約4倍)が最大であった。TIMP-1/MMP-1,TIMP-2/MMP-2が梗塞後は28日まで有意な増加を示したのに対してTIMP-3/MMP-3は変化しなかった。(2)NIFはCL-I,CL-III、FNともにmRNAは2日目が最大発現を示し以後漸減した。しかし、CL-IIIとFNの発現は28日目まで続いた。TIMP-1/MMP-1,TIMP-2/MMP-2は冠結紮後有意な変化を認めなかった。以上より、心筋梗塞部の線維化には細胞外matrix成分の合成と分解の双方の亢進がみられるが、非梗塞部の肥大にはmatrix成分の合成が分解より亢進していると推察される。上記の知見は1998年10月の国際心臓研究学会、1999年3月の日本循環器学会学術集会に発表した。現在、国際学会誌に投稿中である。
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