研究概要 |
心筋の線維化には細胞外マトリックス(ECM)の合成と分解の均衡の破綻が示唆されている。本研究では心筋梗塞や心筋症モデル動物を用い、線維化の進展とMatrixmetaloproteinase(MMP)活性とTissue inhibitor of MMP(TIMP)活性について研究を行った。ラットの心筋梗塞巣ではMMP-9が1週間以内に発現を認め、梗塞後1〜2週間で心筋のMMP-13,-2,-3の発現増加を認めた。一方、TIMP-1,-2の発現は1週間では亢進を認めたが、以後減少した。TIMP-3,-4の発現には変化を認めなかった。非梗塞部では何れのMMPが梗塞後1〜4週間で時間依存性に増加し、3〜4週間で定状状態に達した。MMP-13/TIMP-1とMMP-2/TIMP-2は梗塞域では1〜2週目に亢進するが、非梗塞域ではこの変化は認めなかった。また、ECMの分解にはMMP活性がTissue necrosis factor-α(TNFα),Interleukin-1β(IL-1β)などのサイトカインや種々の増殖因子に影響されることから、心筋梗塞線維化にこれらのサイトカインがどのように関与しているか検討した。その結果、TNFαの遺伝子、蛋白量の発現と免疫組織染色では、MMP-9の発現に先立ち強く発現することを認めた。従って、好中球から遊離されるTNFαの発現は線維芽細胞からのMMP-9の誘導と深い関係があり、心筋線維化への発生に関与している可能性が推察された。現在、TNFαの受容体可溶性部分が心筋梗塞サイズの減少効果があることを確認していることから、遺伝子治療への応用を検討している。
|