研究概要 |
我々は冠攣縮狭心症例において血管内皮型-酸化窒素合成酵素(eNOS)遺伝子にミスセンスGlu298Asp変異を見出した。さらに、5'側非翻訳'領域に三つの連鎖する点変異群T-786→C,A-922→G,T-1468→Aを発見し、それぞれの変異が対照群より冠攣縮群に有意に多く認めることを明らかにした。luciferase reporter assayにより、5'側非翻訳'領域の3つの変異の内では、T-786→C変異型が転写を抑制していることが明らかとなった。核蛋白質を抽出しgel mobility shift assayを行ったところ、T-786→C変異プローブでのみシフトバンドを認め、同部位に負の転写抑制因子が結合することが示唆された。よって、この転写因子のクローニングを開始したが、その結果、この因子は、replication protein A-1(RPA-1)であることが判明した。 ヒトの冠動脈の反応性に関しても、アセチルコリンやISDNに対する反応を比較すると、T-786→C変異の症例は野生型の症例に比較して反応性がより大きいことが判明した。 以上より、我々が同定したeNOS遺伝子T-786→C変異は単なるマーカーではなく、eNOS活性に直接影響を及ぼしている可能性が極めて高い。しかしながら、5'非翻訳領域の変異に関して、これが直接的にeNOS蛋白発現を抑制するという証明はまだなされていないのでその検討を開始した。ヒト臍帯静脈(HUVEC)培養系において、そのgenotypeを決定した後、定量的PCR法を用いて、eNOS蛋白の発現の程度を検討している。最近、Real-time detection RT-PCR法によりeNOSのmRNAを定量する系を確立した。この新しいシステムを用いて従来の定量的RT-PCR法よりも高感度で定量性の高い測定を可能にした。
|