研究目的:アドレノメデュリン(AM)は、褐色細胞腫から単離同定された強力な降圧作用を有する生理活性ペプチドである。AM遺伝子は、副腎髄質、大動脈、心房、心室等の臓器や組織で発現されており、心血管組織においてAMが重要な役割を有する可能性が指摘されている。本研究では、培養細胞や循環器疾患モデル動物を用いて、心血管組織におけるAMの病態生理学的役割の解明を検討し、治療学的応用のための基礎データを得ることを目的とした。研究結果:1.培養新生児ラット心筋細胞や心線維芽細胞からのAM分泌は、アンジオテンシンII(AngII)、エンドセリン(ET-1)や機械的伸展刺激などの心肥大と線維化の促進因子により亢進した。これらの因子はPKCやCa-カルモジュリン系を介してAM産生を刺激することが判明した。2.心筋細胞や心線維芽細胞から分泌されたAMは、オートクリン・パラクリン的に作用して、これらの細胞の肥大や増殖を抑制した。3.カルシトニン受容体様受容体(CRLR)と受容体活性調節蛋白(RAMPs)が共役してAM受容体として機能しているが、心筋細胞におけるCRLRとRAMPsの遺伝子発現と受容体機能は、AngIIやET-1により調節を受けることが明らかになった。4.圧負荷および容量負荷モデルラットの心室筋組織におけるAM発現は、心肥大の程度と関連して増加し、AM発現増加の少なくとも一部はAngIIを介していることが判明した。5.培養ヒト血管平滑筋細胞はAMを産生し分泌しており、血管障害性に作用するアルドステロンはAM発現と分泌を増加させた。結論:AMは、心血管組織の局所調節因子として、心筋肥大や心血管リモデリングに対して抑制的に作用している可能性が示唆された。
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