研究概要 |
心拍数の変動性や複雑性の減少が循環器疾患および高齢者の生命予後と関連する機序を,臨床データおよび動物実験から検討した。 1.高齢者における長期的運動療法の心拍変動に対する効果 65歳以上の健常者30名を、好気的運動群,水中運動群,抵抗運動を加えた好気的運動(PACE)群に分け,週3回12週間の運動療法を施行した。運動耐用能は全群で改善し,群間の差はなかったが,非運動日24時間心拍変動はPACE群のみで有意に増加した。 2.慢性心房細動時の24時間心室応答間隔変動と予後の関連 慢性心房細動107例の24時間の心室応答間隔(R-R間隔)変動の不規則性をaproximate entropy(ApEn)で測定した。33か月の追跡期間中に9例が心臓死,7例が脳卒中死した。ApEnの低下は,他の心血管系危険因子とは独立に,1-SDあたり1.90倍の心臓死のリスクとなることが見いだされた。ApEnは脳卒中死のリスクとは関連しなかった。 3.動物モデルにおける血管内皮機能障害前後の心拍・血圧変動の解析 テレメトリー発信器を移植したビーグル犬3頭で、約3ヶ月間に亘って全拍動のR-R間隔と動脈血圧を測定した。この間にN(G)-nitro-L-arginine methyl ester(L-NAME)10mg/kg/日を慢性投与した。対照条件下で,心拍数,血圧,血圧の低周波数(LF,0.04-0.15Hz)成分振幅は早朝と午前10時(給餌時間)にピークを持つ日内変動を示し,N-N間隔の高周波数(HF,0.15-0.45Hz)成分振幅と圧受容体反射感受性は夜間に増加,早朝と午前10時に低値を示した。L-NAMEにより血圧上昇と徐脈化がみられ,24時間SDRRとN-N間隔変動のHF成分振幅の増加,圧受容体反射感受性の亢進がみられた。
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