1.単一心筋細胞での虚血プレコンディショニング 単一細胞においてもプレコンディショニング現象が起こるかを検討した。虚血の代用としてシアン1mMの潅流を用いた。通常の実験でのプレコンディショニングと同様5分間の短時間シアン潅流を3回行った。プレコンディショニング後にパッチクランプ法によりイオン電流を継続記録できる状態としシアンの本潅流を行った。対照ではではシアン潅流42±12分でATP感受性Kチャネルが開口し、プレコンディショニング細胞では37±16分で開口を認め両者に有意差はなかった。一方プレコンディショニングした後の本潅流にアデノシン10μM若しくはアンギオテンシンII3mMを本潅流に加えることによりATPチャネルの開口までの時間は18±5.4分に短縮した。 2.プレコンディショニングに関する生理活性物質の病態生理的作用 アデノシンに加えATP、サイトカイン等のG蛋白を介した作用を検討した。ATPはアデノシンと同様Gi蛋白を刺激しCa電流を抑制することを見い出した。ATPにはプロテインキナーゼCを活性化することも知られており、当該研究と合せプレコンディショニングに寄与している可能性が示された。またアデノシンにはCa電流を刺激する」作用のも有しており、これまでのプレコンディショニング実験で観察された心筋張力の改善効果に寄与している可能性も示唆された。一方サイトカインのなかでinterferonにはATPチャネルを抑制する作用があり、プレコンディショニングの効果を減弱させている可能性が示唆された。
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