研究概要 |
1)細胞内刺激伝達系蛋白JAK2の阻害剤による高血圧自然発症ラット(SHR)の胸部大動脈の高血圧性動脈硬化病変部への影響 a)15週齢の高血圧ラットに、JAK2抑制剤(AG-490)を経口的に4週間投与した。その後、高血圧ラットの胸部大動脈を摘出した。AG-490の投与により、血圧は低下しなかったが、体重あたりの胸部大動脈重量は非投与群に比べて約20%減少した(P<0.05)。 b)次に胸部大動脈から中膜を分離し、既報の方法(Negoro N. et al.J.Clin.Invest.,1995)を用いてヒストンを除去した細胞抽出液を準備した。 STAT1、STAT2の認識配列であるinterferon stimulated response element(ISRE)、interferon γ-activation site(GAS)、sis-inducible element(SIE)を含む2本鎖DNAをプローブとしてgel shift assayを行い、転写因子量を測定した。 ISRE、GAS、SIEの転写因子は、AG-490の投与により、それぞれ約40%、約36%、約41%減少した(P<0.05)。 c)次に大動脈中膜におけるEGF受容体のチロシンリン酸化をイムノブロットで測定した。正常血圧ラットの大動脈中膜に比べて、EGF受容体のチロシンリン酸化は高血圧ラットの大動脈中膜で増加していた。AG-490の投与により高血圧ラットの血圧は減少しなかったが、EGF受容体のチロシンリン酸化は減少した。高血圧ラットの大動脈中膜におけるEGF受容体のチロシンリン酸化の増加は、JAK2の活性化により生じたクロストークにより増加していると考えられた。
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