本年度の研究では、レプチンの中枢性昇圧機序と血糖コントロールに及ぼす影響を明らかにした。実験には日本白色家兎(体重2.5〜2.7kg)を用いた。ペントバルビタール(30mg/kg)静脈麻酔下で右側脳室にカニューラ(23G)を留置し、左腎交感神経に双極電極を装着した。実験は術後3日目以降に無麻酔で実施した。側脳室内投与レプチンは、用量依存的に血圧の上昇と腎交感神経活性の亢進を来した。50μgのレプチンを側脳室内投与すると、血圧は10分後に、腎交感神経活性は20分後に頂値をとり、60分から90分の経過で前値に復した。同じ家兎を用い、投与前と投与60分後に採血を行い、内分泌因子について検討した。レプチン側脳室内投与により、血漿エピネフリン、ノルエピネフリン、バゾプレッシンおよび血糖は上昇したが、ヘマトクリット、血漿浸透圧は変化しなかった。しかし、これら血圧、腎交感神経活性、内分泌諸因子の反応は、交感神経節遮断薬であるペントリニウム(5mg/kg)の静脈内前投与により抑制された。側脳室内投与レプチンの末梢循環への漏出を検討するために、同用量(50μg)を静脈内投与しても、血圧、腎交感神経活性に変化を認めず、側脳室内投与したレプチンは中枢神経系で作用し、血圧、交感神経系に影響を与えるものと考えられた。血糖の上昇は、交感神経系の亢進、血漿エピネフリンの上昇に続発するものと考えられた。 以上のことから、側脳室内投与レプチンは、中枢神経系において作用し、交感神経系の亢進をきたし、その結果として血圧、血糖の上昇をもたらすと考えられた。これらの結果は、平成11年9月にアメリカで開催された53rd Annual Fall Conference and Scientific Sessions of the Council for High Blood Pressure Researchで既に発表し、平成12年4月の第64回日本循環器学会学術集会においても口演発表する予定である。
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