研究概要 |
弁膜症患者の開心術後の運動療法が運動耐容能と上下肢血管拡張能に与える効果を明らかにした。開心術で弁膜症の根治手術を施行した患者(大動脈弁/僧帽弁閉鎖不全症)35例(平均60歳)を対象とした。入院中に加え退院後も運動療法を施行した群(Ex;n=10)と非施行群(Co;n=25)の2群に対象例を分け、術前と術後3ヶ月の運動耐容能を心肺運動負荷試験により、血管拡張能を静脈閉塞性プレチスモグラフィにより評価し比較した。その結果は以下であった。両群間で年齢、性、体格、術前の最高酸素摂取量(peakVO2,ml/kg/min)、嫌気性代謝閾値(ATVO2)、運動時間(ET)、上下肢基礎血流量(BF)、5分間阻血後反応性充血時の最高血流量(pBF)、総血流量(tBF,いずれもml/min/dl)に差はなかった。術後3ヶ月目からのpeakVO2は両群とも増加した(Ex;17.8±1.0から21.0±1.4,Co;16.6±0.7から17.6±0.8,いずれもp<0.05)。その増加度はExがCoに比し大であった(ΔpeakVO2;5.8±0.8vs2.9±0.7,p<0.05)。ETはpeakVO2と同様の傾向を示した。ATVO2は両群間で差がなかった。上肢のpBFとtBFも両群間で差がなかった。しかし、下肢ではExが大であった(pBF;20.1±2.0vs16.6±1.0,tBF;94.0±6.3vs75.1±5.3,いずれもp<0.05)。以上より、術後、運動耐容能の増加とともに下肢の血管拡張能は改善し、運動療法をすることによりその改善はさらに大となることを明らかにした。心臓弁膜症例でも運動トレーニングにより運動能の改善が図れることが初めてあきらかとなった。
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