研究課題/領域番号 |
11670707
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
熊谷 裕生 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (50170048)
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研究分担者 |
松浦 友一 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (40286480)
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キーワード | 交感神経中枢ニューロン / 延髄吻側腹外側領域 / パッチクランプ / 高血圧の発症機序 / 摘出脳幹-脊髄標本 / 非線形解析 / 相互情報量 / スパイク相関解析法 |
研究概要 |
高血圧の発症の機序を調べるために、交感神経中枢である延髄吻側腹外側領域(RVLM)ニューロンの電気的活動亢進や、RVLMから脊髄中間外側核(IML)ヘの情報伝達の異常を検討している。正常血圧ラット(WKY)と本態性高血圧症モデルである高血圧自然発症ラット(SHR)を用い、血圧の等しい新生児期、および血圧の差が生じる生後6週の、RVLMとIMLニューロンの細胞内電位の電気生理学的性質を比較した。ラット摘出脳幹-脊髄標本を作成し、アイソレータにパッチピペットを取りつけ、マイクロマニピュレーターを用いて操作する。RVLMおよびIMLニューロンの膜電位変化を膜電位固定用増幅器を通じてとらえ、相互情報量(mutual information)法で非線形解析した。主な結果を以下に記す。 (1)WKYとSHRいずれのRVLMニューロンも、発火パターンから規則発火型、不規則発火型、サイレント型の3種類に分類できた。静止膜電位は、規則発火型も不規則型もSHRは-49mVで、WKYの-54mVよりも浅かった。発火頻度は、規則発火型でWKY3.6Hz、SHR5.3Hzであり、不規則発火型でWKY1.3Hz、SHR2.2Hzで、SHRの方が有意に高頻度であった。それにもかかわらずなぜ血圧が等しいのかを検討している。(2)昇圧物質に対する反応性の違いをみるために、6μMのアンジオテンシンIIで標本を灌流すると、WKYのRVLMニューロンは1.2mV脱分極したが、SHRでは8.9mVと著明に脱分極し、発火頻度も増加した。(3)アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗薬であるカンデサルタン(0.06μM)で灌流すると、WKYでもSHRでも静止膜電位から3mV過分極し、有意な差を認めなかった。(4)「RVLMニューロンの細胞外電位」と「交感神経の出力であるIMLニューロンの細胞内電位(パッチクランプ)」の同時記録に世界で初めて成功した。スパイク相関解析法でcorrelogramを作成したところ強い相関を示すnarrow bandを認めた。同時記録より、RVLMニューロンの(自発)発火から45ミリ秒遅れて、IMLニューロンに発火やEPSPを認めた。現在RVLMニューロンとIMLとの関係を非線形解析し、RVLMニューロンの活動亢進が本当に末梢交感神経活動の亢進、血圧上昇に結びつくかを検討している。
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