平成11年度においては、ラットの心筋梗塞モデルと虚血肢モデルを用い、側副路形成過程におけるVEGFの役割について検討を行った。 側副路の発達を虚血筋肉中の毛細血管数(密度)を指標として、側副路発達が良好である動物群と不良である動物群の2群に分け、VEGFの発現について比較検討を行った。 VEGFに対する組織免疫染色を行うと、側副路の発達が不良である群では血管壁におけるVEGFの発現が低下していることが明らかとなった。 また、このようなVEGF発現の低下は、血管を取り巻いている周囲の筋組織においても同様に認められた。一方、側副路の発達が不良である群では、組織中のangiotensin IIの活性が亢進していた。 そこでangiotensin converting enzyme inhibitorの経口投与を3週間に渡って連日行ったところ、組織中のangiotensin IIの活性は有意に低下し、虚血筋中の毛細血管密度は有意に増加した。 Angiotensin converting enzymeの投与による組織毛細血管密度の改善が、果たしてVEGFのupregulationによるものか否かは現在検討中である。 Angiotensin IIがhepatocyte growth factor(HGF)をはじめとする他の血管増殖因子の分泌を制御しているとの報告もあり、VEGFが同様に制御されている可能性は否定できず、その関係については今後検討を行っていく予定である。
|