ラットの心筋梗塞モデルと虚血肢モデルを用い、側副路形成過程におけるVEGFの役割、およびACE阻害薬の側副路形成に与える影響について検討を行った。 側副路の発達を虚血筋肉中の毛細血管数(密度)を指標として、側副路発達が良好である動物群と不良である動物群の2群に分け、VEGFの発現について比較検討を行った。 VEGFに対する組織免疫染色を行うと、側副路の発達が不良である群では血管壁におけるVEGFの発現が低下していた。 また、このようなVEGF発現の低下は、血管周囲の筋組織においても同様に認められた。 一方、側副路の発達が不良である群では、組織中のangiotensin II活性が亢進していた。 そこでangiotensin converting enzyme inhibitorの経口投与を3週間に渡って行ったところ、組織中のangiotensin II活性は有意に低下し、虚血筋中の毛細血管密度は有意に増加した。 angiotensin converting enzyme inhibitor投与による組織毛細血管密度の改善は、投与中のVEGF発現レベルと有意な相関はなかった。 同様の変化は高血圧ラット(SHR)においても認められ、血圧に影響を与えない少量のangiotensin converting enzyme inhibitor投与で、虚血筋中の毛細血管密度の改善と下肢血流の改善とが認められた。 以上により、虚血組織における側副路発達には、VEGFの発現が関与するが、angiotensin converting enzyme inhibitorによる側副路発達の改善は、VEGFの発現とは独立していると考えられた。
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