研究概要 |
<目的・方法> 近年、心不全や高血圧などに対しアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬が利用され、有効であるとの報告が相次いでいる。本剤投与によりACE産生を抑制すると同時にブラジキニン(BK)活性の増強が生じると考えられ、心不全に対してはBKが有益な効果をもたらす可能性がある。しかしBKの心筋に対する直接作用を検討した報告は、見当らず、また心筋にBK受容体が存在するか否かも不明である(血管平滑筋にはBK受容体B_2が存在し、血管内皮よりNO,PGI_2,EDHFの産生を促進し血管平滑筋を弛媛に導く)。そこで、心手術時に得たヒト心房筋、モルモットや家兎の心室乳頭筋を標本とし、電気生理学的には微小電極法、パッチクランプ法を駆使し、また収縮張力に関してはストレンゲージ法を用い検討することにした。そこで得られたBKの心筋作用を分析することにより、心筋BK受容体情報伝達機構の分子生理・薬理的解明が本研究の目的である。 <結果・考察> 本年度は、主にモルモット(250〜350g)の左・右心室より摘出した乳頭筋(1.5×15mm)を標本として、正常Tyode液(1・8mM-Ca^<2+>,5.4mM-K^+含有)灌流下で活動電位と収縮張力を同時記録してコントロールとし、次いで各種濃度のKB(10^<-9>〜10^<-5>モル)を灌流し上記パラメターをコントロールと比較した。比較的低濃度(10^<-9>〜10^<-7>モル)のBK添加後2〜3分には活動電位持続時間延長に伴い収縮張力は増強したが(陽性変力効果)、その数分後には陰性変力効果に転じ、2相性の変化を示した。BK受容体阻害薬(HOE140)存在下や心内皮細胞を選択的に除去(Triton X)すると、後半の陰性変力作用が減弱する傾向がみられた。この所見はBKの後半の作用は、BK受容体を介する作用である可能性を示唆する。平成12年度は上記研究をさらに発展させる他、BKの心筋電流系への作用をパッチクランプ法で検討し、また出来ればBK受容体(Bl,B2)の発現を心内皮細胞、心筋細胞に分けてin situ hybridization法での検討を予定している。
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