研究(1):高ずり応力によって生成されたマイクロパーティクル(PMP)の、単球・マクロファージ系の培養細胞(THP-1)と血管内皮細胞における細胞接着分子発現に及ぼす影響について検討した。PMPにて刺激されたTHP-1では、CD11b、CD32、CD33の発現が増強し、内皮細胞ではCD54とCD63の発現が増強した。サイトカインに関しては、THP-1では、IL-8、IL-1β、TNFαが、内皮細胞ではIL-8、IL-1β、IL-6の産生がみられた。THP-1におけるCD11bの発現と内皮細胞におけるCD54の発現は、PMP刺激後の両細胞の接着部位においてより強固であった。高ずり応力によって生成されたPMPは、THP-と内皮細胞における細胞接着分子発現を増強した。 研究(2):各種血栓性疾患の患者血漿を用いて、活性化血小板、PMP、サイトカイン、ケモカインおよび可溶性接着分子を測定した。ケモカインのうち、MCP-1とRANTESは糖尿病症例において増加しており、いずれも活性化血小板と正の相関関係を示した。一部の閉塞性動脈硬化症(ASO)患者では、炎症性サイトカイン(IL-6、IL-1β、THFα)の増加が観察された。急性心筋梗塞症例でも炎症性サイトカインの増加が観察され、同時にG-CSFやTPOなどの造血性のサイトカインの増加も認められた。いずれの疾患群においても血管病変の進行にしたがい、可溶性接着分子(sVCAM-1、sICAM-1、sP-selectin、sE-selectin)の増加が観察され、活性化血小板やPMPとの相関性を示す症例もみられた。研究(1)と研究(2)の結果より、PMPは、炎症性疾患における血管病変の進展に関与していることが示唆された。
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