研究概要 |
塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor : bFGF)は、血管新生作用を有する成長因子の一つである。我々の成績では、犬において急性冠動脈閉塞を起こし、同時にbFGFを投与すると梗塞サイズは縮小した。これは血管新生作用によるものではなく、bFGFにより虚血心筋が死滅するのを防ぐためであろうと考えられている。今回、この作用の有無を明らかにするために虚血心筋での高エネルギーリン酸代謝がbFGFによりどのように変化するかを^<31>P-NMR法を用いて検討した。日本白色家兎を用い、麻酔開胸下に心臓を摘出し、潅流圧80mmHgでランゲンドルフ潅流した。そして、圧測定のためバルーン付カテーテルを左室へ留置した。10分間のbasal潅流の後、20分間全虚血とした。その後60分間再潅流した。bFGF投与群は、全虚血1分前にbFGF100μg/0.1mlを潅流液中へ注入した。bFGFを注入しなかったcontrol群とbFGF投与群の高エネルギーリン酸代謝物(ATP, PCr, Pi)および心機能(LV発生圧,LVEDP)を比較した。20分後の再潅流時の%ATP,%PCr,%Piは、bFGF投与群では、それぞれ59.4±5.5、89.4±2.8、199.8±14.1(±SE)%とcontrol群のそれぞれ42.0±5.0、70.0±9.6、223.0±30.7%と比較し、bFGF投与群で有意にATPが高値に保たれていた。bFGFは、虚血時ATPレベルを高値に保ち虚血による心筋障害を抑制する可能性があると考えられた。
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