研究概要 |
心房細動(AF)はそれ自体が心房細動を誘発、維持しやすくする。これはAF自体が心房筋に変化を及ぼすためといわれ、このうち電気生理学的変化を電気的リモデリングと呼び、病理学的変化を構造的リモデリングと呼ばれる。我々はアンジオテンシンII受容体拮抗薬candesartanが犬の心房頻回刺激モデルにおいて急性期の電気的リモデリングを抑制することを初めて証明した。次いで、慢性期の構造的リモデリングに対するcandesartanの予防効果を検討した。雑種成犬20頭を用い、ペースメーカより400/分の高頻度心房刺激を行った。1週間毎に5週間右房内4ヶ所の心房有効不応期と、右心耳から他の3点までの伝導時間、及びAF誘発率と持続時間を測定した。対照群10頭とcandesartan投与群10頭で諸指標を比較した。candesartanは高頻度ぺーシングを行う1週間前から5週後まで毎日10mg/kg経口投与した。平均AF持続時間は対照群の方がcandesartan投与群より有意に長かった(1333±725versus411±301秒,p<0.05)。5週後の心房有効不応期短縮の程度は両群間で有意差はなかったが、そのばらつきはcandesartan投与群の方が対照群より有意に少なかった(20±9 versus 6±3 msec, p<0.05)。5週後の心房内伝導時間はcandesartan投与群の方が対照群より有意に短縮していた(68±10 versus 43±14 msec, p<0.05)。Candesartanは対照群に比し心房間質の線維化を有意に抑制した(16±1 versus 7±2%,p<0.05)。このように、candesartanは心房有効不応期短縮のばらつきと線維化による伝導遅延を抑制することにより、心房の構造的リモデリングを予防しうることが明らかとなった。
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