研究概要 |
本年度はIgA-断片化フィブロネクチン(FN)混合物によるIgAのヒト培養メサンギウム細胞あるいは繊維芽細胞への沈着条件について知見が得られた.患者血清由来IgAが培養細胞に沈着するか,するとすればFNが確かに関与しているかを検討した.IgA腎症患者10例、健常小児10例,実験により健常人3例を対象とした.血清IgAの採取はジャカリンアガロースを用いた.ヒトメサンギウム細胞,ヒト繊維芽細胞への患者血清由来IgAの細胞外基質への添加によるIgAの沈着の検出は,試料添加後3時間培養、IgA溶液を排除後さらに24時間培養し、periodate-lysine-paraformaldehyde固定後免疫蛍光抗体法でIgAを観察した.IgA沈着は予想通り患児においてのみ認められた.培養ヒト繊維芽細胞においても培養ヒトメサンギウム細胞と同等の沈着が見られた.IgA沈着物の性状は小塊状あるいは細胞外基質繊維束に沿った顆粒状であった.患者由来IgAを抗ヒトFNモノクロナール抗体FN30-8(細胞結合domain結合部認識),FN9-1(fibrin結合部認識),FN1-1(C-末端S-S結合部認識)にて処理するといずれによっても明らかなIgA沈着の減弱が見られ,IgA沈着におけるFNの関与が示唆された.さらに血清由来IgAに酵素処理により得たFN断片化物を添加すると明らかなIgA沈着の増加がみられた.患者由来IgAの2回連続添加操作により沈着物の数、大きさが増加した.Native SDS-PAGEおよびウエスタンブロットにより患者由来IgAは大分子量側に移行していた.FN抗体でみると,FNは患者では約440kDaの位置でFN8-12(C-末端側fibrin結合部認識)>FN21-1(collagen結合domain-heparin結合domain結合部)>FN9-1>FN30-8>FN1-1>FN H3-8(C-末端側heparin結合domain)の順で広い幅の反応帯として検出された.また,FN8-12,FN9-1によって220kDaの反応帯が見られた.以上から患者IgAは巨大分子化しており,性状として,単量体IgA x2〜3,単量体IgA+単量体FN,単量体〜2量体IgA+断片化FNが推定された.
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