研究概要 |
川崎病は乳幼児に発症する原因不明の血管炎である。当該研究者は,血中の単球遊走活性化因子MCP-1が急性期に血中に増加し,組織においても発現が増強していることを見出した。川崎病の治療薬であるガンマグロブリンは,MCP-1の生理活性を抑制することが判明した。またMCP-1をコードする遺伝子の転写開始部位から2518塩基上流のアデニン(A)とグアニン(G)のSingle nucleotide polymorphismとin vitroでの単核球によるMCP-1産生の関連をみたところ,G allele carrierが統計学的有意差をもってMCP-1を大量に産生することが判った。さらに急性期川崎病患者では,G allele carrierがAA homozygousよりも血中MCP-1を大量に産生することが判明した。同時に,日本人はG alleleを高率に有する民族であることを初めて明かにした。 以上より,川崎病血管炎では,単球遊走活性化因子MCP-1が血管炎初期において炎症現揚の免疫担当細胞の遊走・活性化に重要な役割を果たしていること。さらに,日本人は外的な刺激に対してこのMCP-1を産生しやすい人種的特徴をもっていることが判明した。日本人に川崎病が多いことの背景になりうるかどうか,今後も更に検討が必要である。
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